幼児期の学習において「計算」は重要か?
前回のブログ記事で、
国立小受験で出題されない課題について、
・「読み」
・「書き」
・「計算」
については、受験において出題されない、ということを書きました。
その中で、
「読み」「書き」に関しては、小学校への入学前に、取り組んでおきたい、ということを説明しました。
今日は、小学校受験において出題されない「計算」について、触れていきます。
小学校受験における「数の課題」
小学校受験において、ペーパー課題や、個別課題で出題される「数の課題」は、
じつに多岐に渡ります。
その一例を挙げるとすれば、
・描かれているものの数を数える「計数」(積み上げられた積み木の計数も含む)
・2人が拾ったどんぐりの数があわせていくつになるかを答える「数の合成」
・あわせて○になるように、残りの数を考える「数の構成」
・2つのものの数を比べて、数の多少について答える「求差」
・一つのお皿に○こずつ配っていくと、全部で何個必要かを考える「1対多対応」
・描かれているものを、何人かで同じ数ずつ分ける「数の等分」
・描かれているものを、何個ずつかでまとめたときに、幾つのまとまりができるかを考える「包含除」
・「包含除」の発展系とも考えられる、いくつかの種類のものを、決められた数ずつ(例えば、リンゴ1つ、ミカン2つずつ)に分ける「セットの数」
これが全てではありませんが、
ざっと、イメージしただけでも、このように複数のジャンルの問題があります。
しかも、それぞれの単元で答えを出すための考え方というのは、
小学校で学習する「たしざん」「ひきざん」「かけざん」「わりざん」の学習の、導入的な内容になっています。
小学校受験において、「計算」は使わない?
「じゃあ、結局、小学校での学習内容が小学校受験に出るんじゃないか。」と、思われるかもしれませんが、
小学校受験においてだされる数の課題は、あくまでも、四則演算の「考え方」に通じる問題であり、
問題を解くための、「式」を書いて、計算によって出された「答え」を書くというような、小学校の算数の学習内容にいたるまでのものではありません。
ですから、問題を聞いたときに、
「これは、引き算の問題だな」といったことが分かるところまでは必要ありませんし、
ましてや、引き算をすぐにできることが、必要なわけでもありません。
例えば、「数の違い」を答える「求差」の問題について、考えてみましょう。
問)リンゴとバナナの、数の違いはいくつでしょうか。その数だけ、下のお部屋に○をかいてください。
この問題は、
「リンゴ6個」「バナナ9本」であることが分かれば、
引き算(9−6)で、答えを出すことができます。
小学校1年生で学習する「引き算(求差)」の問題です。
ですが、それを、小学校受験のペーパー問題のなかで取り組もうとすると、どうなるでしょうか。
①リンゴの数を数えて覚える。
②バナナの数を数えて覚える。
③違いを表すのは「引き算」だと判断する。
④9−6の計算をする。
⑤○を3つ書く。
という、4つの工程を、スピーディーに正確に行う必要があります。
特に、①と②で、数えたそれぞれの数を覚えることになるのが、それなりに大変です。
二つの数を数えると、あわせて15のものを数えることになります。
さらに、引き算の計算も、スムーズにできなければなりません。
すべてのものの数を数えて、さらに計算をするまでを、数十秒の短時間で正確におこなうのは、
小学校受験の問題では、かなり負担が大きいです。
そこで、こういったペーパーに取り組む際は、次のような考え方をします。
①リンゴとバナナを1つずつ「線結び」で対応させる。
②線で結べなかった「あまり」の数を数える。
③あまりの数が「数の違い」なので、○を3つかく。
この、「線結び」の考え方は、
なにも受験テクニックというわけではなく、
小学校の算数における「引き算(求差)」の学習でも、同様に1つずつを対応させる考え方が導入されています。
つまり、引き算の「計算」をしなくても、数の違いを比べることができる、ということを理解していたほうが、スムーズに回答できる問題が多いのです。
(こういった理由もあり、おそらく、小学校受験の問題について、式を立てて考える、というような無茶な指導をしているところは、まずないはずです。)
幼児期の学習において、「計算」は重要か。
小学校受験において、「計算」は必要ないということを詳しく説明していきましたが、
では、小学校受験を抜きにして、幼児期に「計算」を練習することは重要なのでしょうか。
この質問に答えるためには、「算数学習」をどこから始めるか、について考える必要があります。
実は、算数の学習をすすめる上で、
「計算をスムーズに行うこと」よりも先に大切なことがあります。
算数学習で、「計算」の前に必要なこと
算数の学習において、まず大切なのは、
足し算や引き算の問題をたくさん取り組むことではありません。
算数の学習では、
「計算」より先に、
それぞれの計算につながる概念・考え方を理解することが大切です。
例えば、足し算に関連する表現の中には、
「たす」以外にも、
「増える」
「くわえる」
「あとから」
「合わせる」
といったように、複数の表現があります。
こうした表現から、「足し算」と同じ数のやりとりをイメージできないと、
小学校以降の「文章題」では、式を立てることができません。
それだけでなく、小学校受験における「数の合成」の課題についても、
上記のような表現を理解できていないと、正しく数を合わせることができないでしょう。
小学校受験における、数の課題は、
小学生の学習における、特に文章題のイメージや理解にもつながる、
算数学習の土台となる課題なのです。
ですから、
計算ドリルを、どんどん進める学習よりも優先したいのは、
それらの計算が行なっている数のやりとりを、言葉を聞いて正しくイメージできることなのです。
幼児期の数の学習は、「具体物」を使い、手をうごかして
また、小学校受験の数の課題に取り組む際は、
ペーパー学習の問題に取り組む前に、
まずは、具体物を使って、実際に手を動かして考える学習をするのがオススメです。
例えば、前述の「求差」の学習についても、
まずは、2つのもの(リンゴとバナナでなくても、アメとチョコでも、なんでも構いません。)を実際に用意してみて、
2つのものの数の違いを比べてみることをしてみると良いでしょう。
それ以外の学習でも、
実際に、手を動かして、具体物を移動させるなどして、考えることが必要です。
ペーパー試験ではない形式で、数の課題が聞かれる場合の、練習にもなります。
今回は、小学校受験期の「計算問題」への取り組みについて、書いてみました。
いずれにせよ、お勉強をするときは、
お子さまの理解に合わせて、楽しく、学習を積み重ねていってください。
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