まずは、受け止める。それから、
授業の中で、気をつけていることがあります。
それは、「可能な限り、生徒が発言する機会を持つようにする」ということです。
何かを「教えよう」「伝えよう」とすると、
どうしても、「話す」ことが多くなってしまいがちです。
ですが、学ぶ内容を理解して定着する度合いを考えると、「話して伝える」ということは、じつはあまり効果的ではないかもしれない、と思っています。
ためしに「お話の内容理解」の問題を聞いて取り組んでみれば、そのことを感覚的に経験できるかもしれません。
(ぜひ、お母さま、お父さまも、「お話の内容理解」の問題に取り組んでみてください。大人ですら、わずか数分のお話を「完全に覚えて理解する」ということに、非常に集中力を要することを実感できるはずです。)
たった数分の「お話の内容理解」ですら、正確に理解することは、なかなか困難です。
で、あれば、数十分にわたるお勉強で、何かを話して伝えきるのには、限界がある、というのは火を見るよりも明らかです。
理解の定着には、積極的なアウトプットから。
また、発言などのアウトプットの機会があるからこそ、より主体的に学習に取り組むことができるようにもなるでしょう。
そういった理由から、授業の中では、頻繁に「これ分かる人!」と、質問をさせていただいています。
たくさんのお子さまが、「はい!」と手を挙げるクラスは、とても活気があって、盛り上がります。
ときどき、講師が盛り上がりすぎて、教室がにぎやかになってしまうことも、ありますが……。
たくさんの意見が、出てきます。
中には、「おっ!」と思わされるような、素敵なお話をしてくれるお子さまもいます。
思ってもいなかった意見を言ってくれるお子さまもいて、驚くこともしばしばです。
勢いよく意見が飛び交う教室の中で、
気をつけたいなと、思っていることがあります。
それは、
「正解」とは、明らかに違うような意見を言ったお子さまや、
手を挙げたけど、答えを忘れてしまったお子さま、
言いたいことを、うまく言葉にすることができなかったお子さまに対して、どのように声をかけるか、についてです。
「違います。」「残念!」「ブブーッ!」などと、言うこともできるでしょう。
実際に、そういった返答で、リズムよく返答をすることもあります。(それは、「藤田先生は何人兄弟でしょう?」などといった、授業の本題とは関係ない他愛もない話をしたりする時です。)
ですが、お勉強の本題に取り組むときは、発言に対して、いきなり否定的なリアクションをすることは、ないようにと心がけています。
なぜなら、
その意見を言ったお子さまは、授業の中で初めて手を挙げたのかもしれませんし、
ちょっと自信がないけど、言ってみよう!と勇気を振りしぼって発言したのかもしれません。
あるいは、いざ当てられたら、緊張で頭が真っ白になってしまったのかもしれません。
それは、これまでのお勉強の中での、初めての経験だったかもしれないからです。
これは、たくさんの意見が飛び交う教室の中では忘れがちなことです。
それぞれのお子さまの「初めての経験」を、
「失敗」とするか「小さな成功」とするかは、
受け手の受け取り方に、よるところも大きいと思います。
私からしたら、
つたない説明をしてくれたお子さまも、
間違っていたけど発言してくれたお子さまも、
お話をすることができなくて、黙り込んでしまったお子さまも、
「意見を言ってくれてありがとう。」「意見を言おうとしてくれてありがとう。」と、思うばかりです。
ですから、どんな意見でも、まずは、言おうとしてくれたことを受け止めようと、思っています。
もし、私の理解力不足で、伝えたいことをうまく受け取り切ることができなかったとしても、せめて「伝えてくれてありがとう」の気持ちを、お伝えできるようにと、思っています。
それらが、どれだけ上手にできているかは、自信がないですが、その姿勢だけは貫こうと、思っています。
子どもたちの「真剣さ」や、「一所懸命さ」に触れたら、そうしないわけにはいかないです。
正解につながるサポートは「イエス」のあと。
お子さまの、真剣な取り組みは、正解、不正解に関わらず、いったんは「マル」として受け止めます。
ですが、それだけでは、学びを深めた、とは言えないかもしれません。
次のステップに進むためには、そのあとです。
お子さまのチャレンジに、「マル」をした後こそ、
さらによくなるための「プラスワン」のアドバイスをするベストタイミングです。
「よくできたね。今度は、ここをこうしてみたら、もっとよくなるよ。」
というような具合です。
できている部分への「マル」があるからこそ、次のアドバイスも受け取りやすくなります。
もし、「マル」がなかったら、どうでしょうか。
「ダメじゃない、ここをこうしないと、正解になりませんよ。」
こうした指摘を受け続けることで、
お子さまは、どう感じ、どう動こうとするようになるか、
それが、ご家庭やお教室でのお勉強そのものに対して、どのような影響をおよぼすかを考えてみると、
「マル」の大切さを、実感できるかもしれません。
「いつまで経っても、成長がない。」
できている部分を認めているのに、いつまで経っても変化がない。
といった状況も、あるかもしれません。
「何度も伝えてるのに、うまくいかない。」
そういったときでも、「マル」は欠かしません。
ただし、そのあとのプラスワンに重点を置いて、
何度も伝えていた内容の質問にしたり(「あとはどうしたら良いと思う?」)
次のステップへの自信をつけさせる声かけにしたり(「何回もやってきたから、そろそろ〇〇もできるようになる頃だね。」)
と、変化させていくことも大切だと、考えています。
もちろん、指導の仕方、声のかけ方に、「万能のパターン」があるわけでもないでしょうから、
ここに書いていることが、当てはまらないお子さまも、いらっしゃるかもしれません。
むしろ、生身のお子さま一人ひとり、ベストな声かけの仕方は、異なるかもしれません。
だからこそ、毎回のやり取りを通して、その「ベスト」を探っていきたいと、思っています。
その探求に、終わりはないはずですから、「より良いもの」を追求していけると思います。
お勉強を通して、お子さまたちと共に、指導者である大人の側も「学び」を深めていけているのだと、感じています。
一緒に学びの場を創ってくれる、皆様のお子さまに、心から、感謝をしています。